「不満は解消してきたけど、不安は解消してきたか?」と聞かれた話

9月7日、一般社団法人わくわくスイッチが運営する「RECRUITERS SALON」に参加してきました。テーマは「人材育成が企業の採用力を育てる」。厚生労働省の採択事業「令和8年度地域活性化雇用創造プロジェクト」の一環として開かれたセミナーです。

講師は三重大学リカレント教育センターの青木雅生先生。中小企業論や経営史が専門で、研究者であり教育者であり、地域に関わる立場でもある、という自己紹介から始まりました。会場は10人ちょっとの少人数。正直、採用の話を聞きに行ったつもりだったのですが、蓋を開けたら中身はほぼ人材育成と組織の話でした。結果的にはそっちのほうが刺さった。

青木雅生先生の自己紹介スライド
自己紹介のスライド。担当科目は中小企業論、経営史、協同組合論など

戦略は組織に従う、組織は戦略に従う

前半で出てきたのが「戦略は組織に従う」「組織は戦略に従う」という、逆向きの2つの言葉。どっちも正しくて、要は戦略を実行するなら組織のことも一緒に考えないと意味がない、という話でした。

その流れで「どんな人に入ってもらいたいのかを明確にする」。採用の入口の話に見えて、これは組織をどうしたいかという話とセットなのだと思う。

魅力ある企業とは何か、という定義も分かりやすかったです。稼ぐ力と、人を育てる力。能力やスキルがあることに加えて、それを安心して発揮できる会社かどうか。ここで「わが社は『働きがい』のある職場と言えるか。その理由は」と全員に問いが投げられました。手が止まった。

不満は解消してきたが、不安は解消してきたか

一番効いたのがこの問いです。

働き方改革が2018年、その前の2013年には「ブラック企業」が流行語大賞に入っている。この十数年、企業はずっと不満の解消をやってきた。労働時間、休み、待遇。でも不安の解消はどうだったか、という指摘でした。

情報過多の時代で、調べれば調べるほど答えが増えて、かえって解決策や展望が見つけられない。その裏側にあるのは不満ではなく不安なのだ、と。動機づけ要因と衛生要因という有名な整理に、もうひとつ「不安の解消」を足して考える、という話だったと理解しています。

処方箋として出てきたのが小さな成功体験。いきなり大きな展望は描けないので、小さく積む。地味だけど、たぶんこれしかないのだろうなと思いました。

若い人が「成長したい」と言うのも、単なる向上心の話ではないらしい。費用対効果の割り算で、頑張っても得られるものが変わらないなら、それなりに働く。損したくない感覚。だから企業がどれだけ成長しているか、頑張りがいがあるかどうかを見ている、という説明でした。これはうちも他人事じゃない。

越境経験がある人ほど離職率が低い

意外だったのがこれです。感覚的には逆で、外を見た人ほど「よそのほうが良さそう」と出ていってしまいそうな気がする。でもデータは逆で、越境経験がある人ほど離職率が低いのだそうです。

同世代で外と関わる経験をすることで、自分の会社や自分の仕事を相対的に見られるようになる、という話だったと思います。「働くということは社会的分業の一端を担うこと」という言葉も出てきました。組織で求められる仕事と、社会で求められる仕事。この2つが自分の中でつながると、たぶん納得感が変わる。

社員を外に出すのは、正直こわい。でもこわがって囲い込むほうがリスクなのかもしれない、というのが今回の持ち帰りのひとつです。

従業員満足とエンゲージメントは別物

終盤は従業員エンゲージメントの話。満足度とエンゲージメントは違うもので、エンゲージメントには能力を発揮できる環境と、活力(健康な状態)が要る。会社の成長と個人の成長がどう重なるか、という整理でした。

最後は三重大学のリカレント教育、経営リカレント研修の紹介。学び続ける仕組みを外に持っている大学がすぐ近くにある、というのは三重の企業にとってはありがたい話だと思います。

明日からの第一歩

締めのアンケートが「御社の『明日からの第一歩』を教えてください」でした。うまい聞き方だなと思いつつ、その場ではすぐに書けなかった。

ただ、少なくとも一つはっきりしたのは、うちが人を採る力を上げたいなら、募集の出し方をどうこうする前に、中の人が育つ会社になっているかどうかのほうが先だということです。人材育成が採用力を育てる、というタイトルはそのままの意味だった。

青木先生、わくわくスイッチのみなさん、ありがとうございました。

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