高校生と大学生9人が、4分ずつ本気を話す場に行ってきた

9月6日の日曜日、津のアスト津で開かれた「MIE とこわか AWARD 2026」に行ってきました。三重の高校生・大学生が、自分の思いと次の一歩を4分間のプレゼンにして話す、というイベントです。主催は一般社団法人ワクワクスイッチ。ギルドデザインは協賛しているのですが、私が実際に会場まで行ったのは今回が初めてでした。

朝から雨で、司会の方も開口一番「お足元の悪い中」と言っていた。井田川から電車で津へ。13時30分にオープニング、13時50分からプレゼン、休憩を挟んでパネルディスカッション、16時45分から表彰と総評、17時30分から交流会。なかなかの長丁場です。

なお、発表者の話には個人的な内容も含まれるので、この記事ではお名前は伏せて書きます。

AIの話が、最初から少し刺さった

主催の中村さんの挨拶から始まりました。3年前に立ち上げて今回で第3回。「常に若々しくあること、若者たちが真ん中にいること」を大事にしている、という話でした。

そのあとAIの話になった。相談する相手もAIになって、AIが決めてくれるようになると、人は自分で判断しなくなる。委ねるのが一番楽だから。でもこのアワードで大事にしているのは「自分で決める、判断する、行動してみる」ことで、AI時代が来てもそこは変えたくない、という趣旨のお話でした。

うちは社内でAIをかなり使い倒している方だと思うので、これは正直、耳が痛かった。と同時に、そうだよなと納得もした。両方だった気がする。

続いてオーガナイザーの岩本さんから、共通スローガンは「自分の人生を自分で面白く」、9人が自分の思いを自分の言葉で表現します、という紹介がありました。

9人のプレゼン

1人4分間、そのあと審査員から7分ほど質疑がつく形式。前半4人、後半5人です。

「幸福追求のすゝめ」(大学2年)

人生の最終目標は「幸せになりたい」。自分にとっては抑圧されていない状態が幸せのスタートライン、という入り方。家庭の事情で家族のサポートが必要になり、自分の時間が圧迫されている。だから自由が欲しい。その自由が手に入ったら、軸のある人・意思のある人に会いに行きたい。神社が好きなので、神社を巡りながら自転車で日本一周したいそうです。ネクストアクションは9月8日に自転車で伊勢神宮まで行くこと。とても元気で、引き込まれる4分間でした。トップバッターでこれを見て、初めて来たけどなかなか面白いイベントだと最初から思った。

「よさこいでバカになろー!」(大学1年)

津まつりの学生運営委員会に所属している方。本音とか自分軸とかありのままの自分とか、考えるのに疲れました、もう何も考えずにありのままを出したい、という入り方が面白かった。踊り手のバックグラウンドを知ったうえで踊りを見ると、同じ気持ちになって我を忘れる。それを「バカになる」と定義していました。10月9日〜11日に津であるよさこい祭りでMCをやるので来てください、と告知していた。

「本音」(大学生)

「ノープランで来ました」と言って始まった。学生フリーランスでSNSマーケと動画編集をやっていて、留学の資金は自分で集めたほうが価値があると思ってそうしたとのこと。フィリピンに1ヶ月留学して初日からトラブルに遭ったらしく、そこから「死ぬこと以外は何とかなる、失敗しても修正できる」という教訓を得た、と。大学の友達に自分の話をしたら笑われた、という話も正直に出していました。ネクストアクションは、まったく触ったことのない分野でインターンをやりたいので誘ってほしい、というもの。

「生きる選択肢を人から人へ」(大学1年)

教育分野に関心がある方。この1ヶ月で掘り下げた結果、自分は小中高の教育に憤りを感じていて、生徒の個性を抑圧する教育になっているのが不満なのだと気づいた、という話でした。メンターに何度も「それは結局あなたの自己満足では」と言われて最初は腑に落ちなかったが、確かに自分の過去の経験だけで語っていて今の現場を見ていなかった、と認めていた。審査員の青木先生からも「怒りは分かるけど、どうしたいのかをもう少し」と突っ込まれていました。

「音楽が持つ、人の心を救う力」(高校2年)

受験期に勉強したくない時期があって、友達に教えてもらったミセスの「僕のこと」の歌詞に救われた。それで「推し曲シェア会」を開いたそうです。1日目は進行がうまくいかなくて沈黙が生まれたけれど、アドバイスをもらって2日目はみんなが楽しそうに話してくれた、という失敗込みの話がよかった。イベントをやるために普段使わない敬語を使って人にお願いした、人前で話すのも慣れた、と。誰かのお守りになるような曲を作るアーティストになりたい、まずは曲を作ります、と締めていました。

「今の自分に必要なことって? 真の覚醒とは!?」(大学2年)

水泳を5年以上やってきて、自分を極限まで追い込める熱量が自分には必要なものだと分かった。今は農福連携を広める活動や県内各地でのボランティア、留学生との交流など充実はしている。でも水泳以外に熱中できるものがまだ見つからない、一緒に考えてほしい、と会場に投げかけて終わりました。答えを出さないまま終わるプレゼンで、これはこれで正直だと思う。

「変わらず広い」(高校生)

中学のときに不登校を経験した方。学校ではクラスと部活の2つの世界しか知らなかったので、部活が嫌になったらそのまま学校ごと嫌になってしまった、辛いものから逃げられなかった、という分析でした。最初は「学校を変える教師になりたい」だったのが、本当に大切にしたいのは人間関係と、お互いに尊敬できる関係だと気づいた、と。学童のアルバイトで自分にだけよく話しかけてくれる子がいて、承認されている感じがしたので自分もそれを返したい、という話も。「自分の見えている範囲が世界の全てじゃない」「世界はずっと変わらず広い」というのがタイトルの意味だそうです。

「私の生き方」(高校生)

中学のときは優等生として見られていた、という話から。自分の人生を生きることを誰かに許されたいわけじゃない、と気づいた。バイトに誘われた時も、インターハイに出てみないかと言われた時も、先を考えずに一歩踏み出してきたそうです。今は大切な人に寄り添える自分でありたい、寄り添うとはとことん一緒に悩むことだと思う、と。将来は自然の中に、否定されない安全地帯のようなカフェを作りたいというビジョンを話していました。

「なにもない“まち”が面白い“まち”に」(大学2年)

地元は熊野だそうです。幼い頃に電車を追いかけて走った線路沿いの道路の写真から入りました。5年前に広島でたまたま尾道に降りて、小さな店で「これ誰に買ってあげるんですか」「妹です」「じゃあこっちの方が可愛いんじゃない」というやりとりをしてもらったのが忘れられない、それを「生きた言葉」「優しい空間」と呼んでいた。桑名駅前は日本で唯一3種類の線路幅が集まる場所で鉄道ファンには有名、というような「人の数だけ視点がある」話も。まずは桑名でみんなを集めて街歩きを企画したい、とのことでした。

内容も出来も揃っていない。答えが出ないまま「一緒に考えてほしい」と終わる方もいれば、ノープランで来ましたと言って登壇する方もいる。でも、そこが逆によかった。

パネルディスカッション

休憩を挟んで、前半は実行委員会の裏側の話でした。運営メンバーは全員ボランティアで、過去の参加者のOB・OGも一部運営に入っていて循環が生まれているそうです。今年から「バディ」という役割が新設されて、プレゼンターの日々のフォローを担当している。バディの方が「この子たちのために何がしてあげられるだろう、と悩みながら1ヶ月やっていた」と言っていたのが印象に残りました。メンター側からは「今年はバディが手厚く動いていた。正直もう少しメンターを使ってもらってもよかった」というコメントもあった。運営の裏側をこうやって表に出すのは珍しいと思う。

MIE とこわか AWARD 2026 のパネルディスカッション前半、実行委員会のメンバーが登壇している様子
パネルディスカッション前半は、実行委員会が運営の裏側を話す回だった

後半は審査員4名の話。個人的にはここが一番面白かった。

MIE とこわか AWARD 2026 のパネルディスカッション後半、審査員4名が登壇している様子
パネルディスカッション後半「さらに次の一歩につなげるには?」

堀さん(2024年のプレゼンターOBで、現在は三重大学医学部)は、自分がプレゼンターだったときは不完全燃焼のまま終わった、という話から。人を巻き込め、1人だとどこかで苦しくなってやめられてしまう、たくさんの人を巻き込んだからもうやめられない、という状態が自分を強くした、と。

筒井さん(NPO法人atrio キャリアコンサルタント)は、大人の言うことは半分聞いて半分聞かないほうがいい、と。いろんな人に会うと比較ができて逆に自分が見えてくる。学生の頃に出会った人とは今もつながっている。興味があること・ピンとくることに対して活動し続けることが大事、というお話でした。

川喜田さん(三重トヨペット株式会社 代表取締役社長)は、もともとAIの研究者を8年ほどやってから経営側に移られた方だそうです。人生で絶対に譲れない、これだけは達成したいというものを見つけてほしい、ただしそれは10年20年かかるかもしれない、探していないと必死に生きているだけで10年過ぎる、と。それと「7〜8割以上の情報を集めずに決めよう」。9割10割集めて間違いないと言えるまで考え込むと、決断が遅れて大事なタイミングを逃す。もう一つはスティーブ・ジョブズの話で、子どものころトランジスタラジオを作りたくて、電話帳で調べた会社に電話して「部品をください」と頼んだら、笑われながらもくれたという逸話。頼めば人はたいてい応じてくれる、という趣旨でした。

審査委員長の青木先生(三重大学)は、自分のことだけでなく、自分の周りや地域、社会が今どうなっているのかも調べてみるといい、と。自分の内側と社会を往復すると、方向性が太くなったり別の道が見えたりする。それは効率的にはいかないので、かなりの無駄足が必要になる。だからこそ24時間全部自分に使える学生時代は、無駄に見えることに突っ込めるいい時期なんだ、というお話でした。

川喜田さんの「7〜8割で決めろ」と、頼めば人はたいてい応じてくれるというジョブズの話は、聞いていて刺さった。学生向けの話として聞いていたつもりが、途中からそのまま自分たちの話になっていた。

表彰と、交流会

賞は全部で6つ。企業特別賞のファーストペンギン賞は「よさこいでバカになろー!」の方で、副賞は鈴鹿サーキットをスーパーカーで走行体験(一流選手の指導付き)。ハウスクラフト ザ・フューチャー賞は「なにもない“まち”が面白い“まち”に」の方で、副賞はハウスクラフトさんの全体会議&懇親会への特別参加券。会場共感賞は「私の生き方」の方、実行委員会賞は「本音」の方でした。壇上で「メンタル筋肉痛です」と言っていたのが良かった。とこわか賞は「音楽が持つ、人の心を救う力」の方。

そしてとこわか大賞は「変わらず広い」の方でした。審査基準は3つで、自分と向き合えているか、しっかり伝えられているか、ネクストアクションの良さ。過去の失敗を丁寧に振り返って、そこから得たものを言語化していること、ネクストアクションが「できそうでできなそうで、できてほしい」具体性を持っていたことが決め手だったそうです。この言い回しが妙に良かった。

青木先生の総評は、自分は過去のどこにも戻りたくない、これまでやってきたこと全てが今につながっているという自信がある、という話。50を過ぎてもチャレンジし続けているとのことでした。

そのあとの交流会では、いろんな発表者と直接話す機会がありました。プレゼンを聞いただけでは分からない話がいろいろ聞けて、とても楽しい時間だった。

行ってよかった

初めて参加しましたが、なかなか面白いイベントでした。1ヶ月かけて自分に問いを立てて、人と対話して、小さくても行動して、それを4分で話す。プログラムの作りがしっかりしていると思う。

今の学生でもこんな学生がいるんだな、というのは素直に励みになりました。プレゼンをじっくり聞いたうえで、そのあと本人と直接話せる。こういう場はなかなか無いと思う。協賛して席を持っている意味はここにあったのだと、行ってみて分かった。

閉会の挨拶で「4期目もやります、また来年夏に三重のどこかで」と言っていました。来年も見に行きます。

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