机の上の困りごとが、商品案になって出てきた

10月19日、名古屋産業大学のPBL(プロジェクト実習)に行ってきました。3回目です。月曜の3限、13時から14時半まで。

この授業は、学生が考えた商品をギルドデザインが3Dプリンターで試作して、年明けにヤフオクで実際に売るところまでやります。売れたら売れたで、売れなかったらそれはそれで、結果がそのまま出る。この日は、一人ずつ自分のアイデアを発表する回でした。

この日の発表は10人。聞いていて、今までになく良いアイデアが揃ったなと思いました。

出てきたのは、机まわりの困りごと

この日に出たのは、こんな商品案です。

  • スマホスタンド(ティッシュケースとスマホスタンドと小物収納を1つにする)
  • カラビナ付きのカードケース
  • 貴重品を管理できる小皿(家の鍵や財布の置き場)
  • 眼鏡置き場(眼鏡を何本も持っている人向け)
  • レコードスタンド
  • コントローラー専用スタンド(ゲームの機種に合わせて作る。ヘッドホンやケーブルも一緒に片づく)
  • ケーブルホルダー
  • ドライヤースタンド(髪を乾かすあいだ、腕がふさがらないように)
  • 趣味の文庫本収納
  • 幾何学教育の正多面体

並べてみると、ほとんどが机の上やその周りの話です。ゼロから何かを発明するというより、自分がいま困っていることを片づける方向。そのほうが、作ったあとに使う人の顔が浮かびやすいと思います。

スマティッシュBOXの発表

*「スマティッシュBOX」。ティッシュを取り出しやすくして、スマホを立てて充電もできて、リモコンも入る。3つの機能を15cm以内に収めるのが課題、と本人も分かっている*

貴重品を管理できる小皿の発表

*こちらは家の鍵や財布を置く小皿。売り方はネットショッピングで、と書いてあった*

「困っていること」から始まっていた

良かったのは、商品の説明より先に「困っていること」から入る発表があったことです。

レコードスタンドの人は、スライドに「レコードを飾る場所がない!!!」とだけ大きく書いていました。ケーブルホルダーの人は、充電ケーブルが机から落ちるのを防ぎたい、と。

困りごとが先にあると、その後の話が早い。何を解けばいいかがはっきりしているので、形の話も寸法の話も進みます。

レコードスタンドの発表

*「困っていること レコードを飾る場所がない!!!」。これだけで何を作りたいかが伝わる*

ケーブルホルダーの発表

*ケーブルホルダー。携帯やタブレットを使う学生や会社員向けに、1個売りと複数個セットの両方を考えていた*

価格まで調べてあった

似た商品を調べてきた人もいました。他社の商品を3つ並べて、1000円から1500円、6600円、1640円と価格まで書いてある。市販の汎用スタンドと自分の案を、対応・形とサイズ・デザイン・改善の4項目で比べた表を作ってきた人もいました。

自分の案の良さだけを言うのは簡単です。すでに売っているものと何が違うのかを調べるのは、面倒だし、調べるほど「これ、もう売ってるな」と気づいてしまったりもする。それでも調べてきたのは、ちゃんとやってきた証拠だと思います。

既製品との違いを比べた表

*市販の汎用スタンドと今回の商品案を、対応・形とサイズ・デザイン・改善の4項目で比べた表*

今までで一番よかった、と思う

後半の自分の出番のあたまで、つい「3年間ずっとやってるんですけど、今回のが1番レベルが高かったような気がします」と言ってしまいました。先生に「本当ですか?」と聞かれて、「本当です。本当です。本当です」と3回くり返すことになりました。

どれをとっても作れそうな感じで、ちゃんと調べてきた感じがしました。本当にみんな頑張ってきたな、と。

なぜこうなったかというと、たぶん先生がちゃんと付き添って教えているからだと思います。授業中も、野間先生が席を回って一人ずつ見ていました。

学生に自由にやらせるのもいいんですけど、こういうふうにきちっとやったほうが身になるんじゃないか。そんな気がしています。

野間先生が学生の席を回っている

*席を回って一人ずつ見ていく。この時間が効いていると思う*

全員で採点して、上位3〜4案を選ぶ

発表のあとは、学生同士の採点です。自分の発表には点を付けない。用紙に名前は書かず、匿名で出す。

見るところは3つで、それぞれ3点・2点・1点を付けます。

  • 新規性(間違いなくそう思う=3点、そうかもしれない=2点、違うかもしれない=1点)
  • 素材を活かしているか
  • 実現できそうか

合計点の高い上位3〜4案が選ばれて、その案を出した人のところに、ほかの学生が入ってグループになります。ここから先は個人戦ではなくなります。

採点用紙はその場で回収して、先生が持ち帰って集計します。だから、どれが選ばれたかはこの日はまだ分かりません。次回のお楽しみです。

うまい絵は、いりません

後半は、私から「ポンチ絵のかき方」の話をしました。ポンチ絵というのは、設計の前の手がきの絵のことです。

最初のスライドに「うまい絵は、いりません。つくる人に『伝わる絵』をかきます」と書きました。きれいな絵のコンクールではないので、定規もいりません。この絵をもとに、うちが3Dデータに起こして試作します。

守ってほしいのは3つだけ。

  1. 4つの向きからかく(正面・真横・真上・ななめ)。1つの絵では伝わらない
  2. 大きさを数字で書く。単位はmm。15cmなら150mm。幅と奥行きと高さの3つは必ず
  3. 使いかたを一言で書く。どこに置くのか、何を入れるのか

逆によくあるのが、影や色に時間をかけてしまう、大きさが書いていない、動くところが分からない、の3つです。10分でかける絵が、ちょうどいいと思います。手が止まったら、となりの人に「これ分かる?」と聞いてもらうのが早い。

スライドに載せた図を自分で見ながら「これちょっと分かりにくいんやけど」と言ってしまって、次のページのほうが分かりやすい、と訂正する場面もありました。人に伝わる絵の話をしている最中に、自分の資料がいちばん伝わっていなかったわけです。

その場で出た質問にも、いくつか答えました。紙はA4で足りる。定規は使っても使わなくてもいい。学生なら無料で使えるCADがあるので、それで描いてもらってもいい。描いてほしいのは展開図ではなく、できあがった形のほう。立体のまま描いてもらえれば、3Dプリンターで出せます。迷ったら、紙でいちど作ってみるのも早いです。

教室の様子。手前のPCにポンチ絵のかき方のスライド

*この日の教室。まるテーブルを囲む形で、発表も講義もここでやった*

ポンチ絵のサンプル

*授業で見せたサンプル。手がきのままでいい。そのかわり、寸法と角度と、ひらいた形が書いてある。この例は cm で書いてあるが、学生には mm でお願いしている*

この先の予定

  • 10月26日 採点の結果でグループ分け。ライバル分析を仕上げて、商品の仕様の方向を決める。この日は所用で、私は行けません
  • 11月2日 グループごとに一次案を発表(1グループ3分)。私も行って講評します
  • 12月21日まで 3Dプリンターで試作
  • 1月25日から1週間 ヤフオクに出品
  • 2月1日 成果報告

宿題も出ています。似た商品を3つ調べて比べることと、ポンチ絵をかいてくること。次回と次々回の2回で一次案の発表まで行くので、休まずに出てきてほしいところです。

あそび心を、売れる形にする

ギルドデザインは「あそび心を形にする」を掲げて、バイクのカスタムパーツやiPhoneのアルミケースを作っている会社です。

おもしろいアイデアがあっても、そのままでは商品になりません。15cm角に収まるか。その厚みで折れないか。すでに売っているものと何が違うのか。その地味なところを越えないと、値段を付けて人前には出せない気がします。

この日の発表で出てきた困りごとが、どこまでその形に化けるか。次が楽しみです。

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